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遠藤 潔
遠藤潔の活動報告
国連のCOVID-19に対する包括的対応
2020年06月25日
あすの国連憲章採択75周年を前に、私たちは世界を揺るがす大混乱とリスクの最中にあります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から気候の攪乱、人種的不公平から増大する不平等に至るまで、私たちは激動の世界を生きています。
同時に、国際社会には、国連憲章に体現され、私たちをより良い未来へと導く恒久的なビジョンもあります。国連憲章の価値観により、私たちは多くが恐れていた第三次世界大戦の惨劇を避けることもできました。今の難局への対応は、私たちが共有する課題です。
まず、COVID-19についてお話ししましょう。顕微鏡でしか見えないほんの小さなウイルスが、私たちの世界に壊滅的な影響を及ぼしています。その世界的大流行(パンデミック)は、深刻かつ組織的な不平等を白日の下にさらしました。また、世界がさらに広く抱える脆弱性も明らかになりました。それは単に、さらなる健康上の緊急事態に対する脆さだけではなく、気候危機やサイバー空間の無法状態、さらには再び現れた核拡散のリスクに対する弱さでもあります。
人々は、政治的な既成勢力や制度機構に対する信頼を、いまだかつてないほどに失いつつあります。世界のリーダーたちは、こうした脆弱性を前にして、団結と連帯が極めて重要であることを謙虚に認識する必要があります。次に何が起こるかを予測できる人はいません。私たちは五里霧中の状況にあるからです。私たち国連はできる限り、この深い霧をかき分けて、行動してきました。国連ファミリーは人命を救い、ウイルスの感染を抑え、経済の低迷を和らげるため、力を結集しています。
私たちは、130カ国以上に2億5,000万着を超える個人防護具を出荷し、1億5,500万人の子どもの教育を確保するとともに、4,500万人の子どもと親、介護者に対し、メンタルヘルスの支援を提供しています。私たちは、国連のサプライチェーン・ネットワークを加盟国のために供出し、全世界8カ所に空輸拠点を設けて、直近の6週間だけでも6万9,000立法メートルの医薬品を110カ国以上に届けています。医療従事者やコミュニティーワーカーも200万人近く養成しました。300万人の子どもと大人が性的搾取や虐待を通報できるよう、安全なチャネルも設けました。そして、20億人以上を対象に、安全の確保と医療へのアクセスに関する情報を発信しました。
国連は当初から、最も弱い立場にある人々と国々に対する大規模なグローバル支援を求めてきました。それは、世界経済の少なくとも10%の規模に上る総合的救済策を立ち上げ、開発途上地域がそれによって恩恵を得られるよう、連帯のメカニズムを推進することです。国連はまた、すべての人が購入、利用できるワクチン実現に向けた研究開発を加速するための活動も支援してきました。それこそが、グローバルな公共財だからです。
私のグローバル停戦の呼びかけに対しては、およそ180カ国と20を超える武装集団のほか、宗教指導者に加え、数百万人の市民社会メンバーからも支持の表明がありました。問題はその実施にあります。事務総長特使と私は、実効性のある停戦の確立に向けて力を合わせるとともに、あらゆる手段を使って、当事者間の深い不信と、混乱に既得権を有するために和平を妨害する者を生み出した長期にわたる紛争の負の遺産を克服しようとしています。
私たちはまた、デマの蔓延とも闘っています。来たる6月30日、私たちが新たに立ち上げた「Verified(ベリファイド/検証済み)」イニシアチブは、ソーシャルメディア・プラットフォームの利用者に対し、疑わしい情報を共有する前に、少し立ち止まって考えるという、グローバルな「Pause(ちょっと待って)」特別キャンペーンへの参加を呼びかける予定です。
私は本日、「国連のCOVID-19に対する包括的対応(UN Comprehensive Response to COVID-19[PDF])」の概要を発表します。過去3カ月の私たちの行動を記録するだけでなく、より良い復興に向けたロードマップにもなる文書です。
以前のやり方に戻り、今回の危機を悪化させてきたシステムを単純に再現することは、もうできません。私たちは、さらに持続可能で包摂的、かつジェンダー平等型の社会と経済へと、より良い復興を遂げる必要があります。例えば、COVID-19復興計画に石炭を含めるべき正当な理由は、どの国にもありません。今こそ、汚染と温室効果ガスの排出がなく、やりがいのある人間らしい仕事を創出し、資金を節約できるエネルギー源に投資すべき時だからです。
国連はこの復興の先頭に立つことを強く決意しています。国連は75年間にわたり、世界の亀裂を縫い合わせ、グローバルな問題解決と共通の利益実現に向け、生産的な協力関係を築こうとしてきました。そして今、私たちは持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指して、83カ国の8,700万人に食料援助を、世界の子どもの半数にワクチンを提供し、毎年300万人の命を救うことに貢献しています。
国連で働く女性と男性は、8,000万人の難民と国内避難民を支援し、200万人を超える女性と女児が妊娠や出産による合併症を克服できるようにしています。総勢9万5,000人の兵員、警察官、文民職員からなる40件の政治ミッションと平和維持活動は、平和の維持と民間人の保護に努めています。私たちの選挙支援も、毎年60カ国に提供されるようになっています。拷問被害者に対する援助も、4万人に達しています。また、人権を守り、侵害を公にし、その実行犯に責任を問うため、毎年約7,500件の監視団派遣も行っています。これこそが、来る日も来る日も、24時間体制で、世界的に活動する国連の姿です。
私たちは創設75周年という記念の年にあたり、一年を通して人々の声にも耳を傾けています。その一環として、5,000人以上のパートナーを動員し、124カ国で1,000回を超える聞き取りを行っています。私たちの将来について語るUN75アンケートには、193の加盟国とオブザーバー国から23万人以上が参加しました。その回答を見ると、COVID-19以後の世界の優先課題がはっきりと浮かび上がります。
第1に、医療への普遍的なアクセス。
第2に、人々の間、そして国々の間の連帯の強化。
そして第3に、不平等に対抗するためのグローバル経済の再考です。
私たちは国連憲章記念日を機に、将来を見据えるにあたり、国々の協力の在り方を考え直さなければなりません。私たちはネットワーク型のマルチラテラリズムで、国連システムや地域機関、国際金融機関などを結集させる必要があります。私たちに必要なのは、市民社会、企業、都市、地域の不可欠な貢献に依拠し、とりわけ若者の声をより重視した包摂的マルチラテラリズムです。21世紀の世界では、政府だけが政治や権力の現実を決めるわけではないからです。また、必要な場合にグローバル・ガバナンスの手段として機能できる実効的なマルチラテラリズムも必要です。
問題は、世界が抱える課題にマルチラテラリズムが対処できていないということではありません。現在のマルチラテラリズムに規模や野心、威力が欠けているという点が問題なのです。
しかも、最近になって安全保障理事会が直面している困難を見ても分かるとおり、実際に威力のある手段の中には、それを発揮しようとする意志が不足していたり、欠けていたりするものもあります。
私たちの課題に立ち向かう能力、それも単にとりあえずのニーズを満たすだけでなく、将来の世代がそのニーズを充足できるようにする能力を、マルチラテラリズムに与える必要があります。ますます相互依存を深める世界で、国益を簡単にグローバルな利益から切り離すことはできません。共有の価値、共有の責任、共有の主権、共有の進歩を、私たちの指針と目標にしなければなりません。私は課題があることも理解しています。大国の積極的な参加がなければ、グローバル・ガバナンスの仕組みを有意義な形で変えることは困難です。そして率直に申し上げれば、大国間の関係が今ほど機能不全に陥ったことはありません。
しかし、私たちが共有の脆弱性を認識するようになった時、つまり、現時点で分断を作り出している要因が逆に、こうした分断があらゆる人、そして何よりもまず自分にとって危険であることを人々に否が応でも理解させ始めた時、覚醒が訪れることを私は固く信じています。最終的に、深い霧から脱出する方法はそれしかないからです。国連憲章は、そのための道標となります。
私は、国連がこの数十年間に実現を促進した多くのこと、そして、COVID-19への対応で見られた多くの勇敢な行動から、勇気をもらっています。こうした連帯と団結を重ねていくべきです。来たる9月、どのような手法であろうとも、こうした事柄について世界のリーダーと話し合えることを楽しみにしています。私たちが共有する世界をともに考え直し、つくり変えていくことが絶対に必要だからです。
■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。
同時に、国際社会には、国連憲章に体現され、私たちをより良い未来へと導く恒久的なビジョンもあります。国連憲章の価値観により、私たちは多くが恐れていた第三次世界大戦の惨劇を避けることもできました。今の難局への対応は、私たちが共有する課題です。
まず、COVID-19についてお話ししましょう。顕微鏡でしか見えないほんの小さなウイルスが、私たちの世界に壊滅的な影響を及ぼしています。その世界的大流行(パンデミック)は、深刻かつ組織的な不平等を白日の下にさらしました。また、世界がさらに広く抱える脆弱性も明らかになりました。それは単に、さらなる健康上の緊急事態に対する脆さだけではなく、気候危機やサイバー空間の無法状態、さらには再び現れた核拡散のリスクに対する弱さでもあります。
人々は、政治的な既成勢力や制度機構に対する信頼を、いまだかつてないほどに失いつつあります。世界のリーダーたちは、こうした脆弱性を前にして、団結と連帯が極めて重要であることを謙虚に認識する必要があります。次に何が起こるかを予測できる人はいません。私たちは五里霧中の状況にあるからです。私たち国連はできる限り、この深い霧をかき分けて、行動してきました。国連ファミリーは人命を救い、ウイルスの感染を抑え、経済の低迷を和らげるため、力を結集しています。
私たちは、130カ国以上に2億5,000万着を超える個人防護具を出荷し、1億5,500万人の子どもの教育を確保するとともに、4,500万人の子どもと親、介護者に対し、メンタルヘルスの支援を提供しています。私たちは、国連のサプライチェーン・ネットワークを加盟国のために供出し、全世界8カ所に空輸拠点を設けて、直近の6週間だけでも6万9,000立法メートルの医薬品を110カ国以上に届けています。医療従事者やコミュニティーワーカーも200万人近く養成しました。300万人の子どもと大人が性的搾取や虐待を通報できるよう、安全なチャネルも設けました。そして、20億人以上を対象に、安全の確保と医療へのアクセスに関する情報を発信しました。
国連は当初から、最も弱い立場にある人々と国々に対する大規模なグローバル支援を求めてきました。それは、世界経済の少なくとも10%の規模に上る総合的救済策を立ち上げ、開発途上地域がそれによって恩恵を得られるよう、連帯のメカニズムを推進することです。国連はまた、すべての人が購入、利用できるワクチン実現に向けた研究開発を加速するための活動も支援してきました。それこそが、グローバルな公共財だからです。
私のグローバル停戦の呼びかけに対しては、およそ180カ国と20を超える武装集団のほか、宗教指導者に加え、数百万人の市民社会メンバーからも支持の表明がありました。問題はその実施にあります。事務総長特使と私は、実効性のある停戦の確立に向けて力を合わせるとともに、あらゆる手段を使って、当事者間の深い不信と、混乱に既得権を有するために和平を妨害する者を生み出した長期にわたる紛争の負の遺産を克服しようとしています。
私たちはまた、デマの蔓延とも闘っています。来たる6月30日、私たちが新たに立ち上げた「Verified(ベリファイド/検証済み)」イニシアチブは、ソーシャルメディア・プラットフォームの利用者に対し、疑わしい情報を共有する前に、少し立ち止まって考えるという、グローバルな「Pause(ちょっと待って)」特別キャンペーンへの参加を呼びかける予定です。
私は本日、「国連のCOVID-19に対する包括的対応(UN Comprehensive Response to COVID-19[PDF])」の概要を発表します。過去3カ月の私たちの行動を記録するだけでなく、より良い復興に向けたロードマップにもなる文書です。
以前のやり方に戻り、今回の危機を悪化させてきたシステムを単純に再現することは、もうできません。私たちは、さらに持続可能で包摂的、かつジェンダー平等型の社会と経済へと、より良い復興を遂げる必要があります。例えば、COVID-19復興計画に石炭を含めるべき正当な理由は、どの国にもありません。今こそ、汚染と温室効果ガスの排出がなく、やりがいのある人間らしい仕事を創出し、資金を節約できるエネルギー源に投資すべき時だからです。
国連はこの復興の先頭に立つことを強く決意しています。国連は75年間にわたり、世界の亀裂を縫い合わせ、グローバルな問題解決と共通の利益実現に向け、生産的な協力関係を築こうとしてきました。そして今、私たちは持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指して、83カ国の8,700万人に食料援助を、世界の子どもの半数にワクチンを提供し、毎年300万人の命を救うことに貢献しています。
国連で働く女性と男性は、8,000万人の難民と国内避難民を支援し、200万人を超える女性と女児が妊娠や出産による合併症を克服できるようにしています。総勢9万5,000人の兵員、警察官、文民職員からなる40件の政治ミッションと平和維持活動は、平和の維持と民間人の保護に努めています。私たちの選挙支援も、毎年60カ国に提供されるようになっています。拷問被害者に対する援助も、4万人に達しています。また、人権を守り、侵害を公にし、その実行犯に責任を問うため、毎年約7,500件の監視団派遣も行っています。これこそが、来る日も来る日も、24時間体制で、世界的に活動する国連の姿です。
私たちは創設75周年という記念の年にあたり、一年を通して人々の声にも耳を傾けています。その一環として、5,000人以上のパートナーを動員し、124カ国で1,000回を超える聞き取りを行っています。私たちの将来について語るUN75アンケートには、193の加盟国とオブザーバー国から23万人以上が参加しました。その回答を見ると、COVID-19以後の世界の優先課題がはっきりと浮かび上がります。
第1に、医療への普遍的なアクセス。
第2に、人々の間、そして国々の間の連帯の強化。
そして第3に、不平等に対抗するためのグローバル経済の再考です。
私たちは国連憲章記念日を機に、将来を見据えるにあたり、国々の協力の在り方を考え直さなければなりません。私たちはネットワーク型のマルチラテラリズムで、国連システムや地域機関、国際金融機関などを結集させる必要があります。私たちに必要なのは、市民社会、企業、都市、地域の不可欠な貢献に依拠し、とりわけ若者の声をより重視した包摂的マルチラテラリズムです。21世紀の世界では、政府だけが政治や権力の現実を決めるわけではないからです。また、必要な場合にグローバル・ガバナンスの手段として機能できる実効的なマルチラテラリズムも必要です。
問題は、世界が抱える課題にマルチラテラリズムが対処できていないということではありません。現在のマルチラテラリズムに規模や野心、威力が欠けているという点が問題なのです。
しかも、最近になって安全保障理事会が直面している困難を見ても分かるとおり、実際に威力のある手段の中には、それを発揮しようとする意志が不足していたり、欠けていたりするものもあります。
私たちの課題に立ち向かう能力、それも単にとりあえずのニーズを満たすだけでなく、将来の世代がそのニーズを充足できるようにする能力を、マルチラテラリズムに与える必要があります。ますます相互依存を深める世界で、国益を簡単にグローバルな利益から切り離すことはできません。共有の価値、共有の責任、共有の主権、共有の進歩を、私たちの指針と目標にしなければなりません。私は課題があることも理解しています。大国の積極的な参加がなければ、グローバル・ガバナンスの仕組みを有意義な形で変えることは困難です。そして率直に申し上げれば、大国間の関係が今ほど機能不全に陥ったことはありません。
しかし、私たちが共有の脆弱性を認識するようになった時、つまり、現時点で分断を作り出している要因が逆に、こうした分断があらゆる人、そして何よりもまず自分にとって危険であることを人々に否が応でも理解させ始めた時、覚醒が訪れることを私は固く信じています。最終的に、深い霧から脱出する方法はそれしかないからです。国連憲章は、そのための道標となります。
私は、国連がこの数十年間に実現を促進した多くのこと、そして、COVID-19への対応で見られた多くの勇敢な行動から、勇気をもらっています。こうした連帯と団結を重ねていくべきです。来たる9月、どのような手法であろうとも、こうした事柄について世界のリーダーと話し合えることを楽しみにしています。私たちが共有する世界をともに考え直し、つくり変えていくことが絶対に必要だからです。
■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。