遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

アントニオ・グテーレス 国連事務総長

2020年05月01日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、全世界の高齢者に語りつくせない不安と苦痛をもたらしています。高齢者の死亡率は全体的に高く、80歳を超える人々の死亡率は世界平均の5倍にも上ります。

今回のパンデミックは、当面の健康への影響だけでなく、高齢者を貧困や差別、孤立に追いやるリスクも高めています。特に、開発途上国の高齢者には、計り知れない影響が及ぶと見られています。私自身も、さらに高齢の母を持つ高齢者として、今回のパンデミックにつき、個人的なレベルはもとより、私たちのコミュニティーや社会に対する影響も深く憂慮しています。

私たちはきょう、こうした課題に立ち向かうための分析と提言を提供する政策概要を発表します。私たちのCOVID-19への対応は、高齢者の権利と尊厳を尊重するものとしなければならないからです。

そこには4つの大きなメッセージがあります。

第1に、若者か老人かに関係なく、犠牲にしてもよい命などありません。高齢者には、他の誰とも同様に、生存権と健康を守る権利があります。救命医療にまつわる困難な決定は、すべての人の人権と尊厳を尊重するものとしなければなりません。

第2に、身体的距離を確保することが必要不可欠だとしても、私たちが一つのコミュニティーであり、お互いに離れられない存在であることは忘れないでおきましょう。デジタル技術を通じて高齢者に手を差し伸べるためには、社会的支援の改善と、よりスマートな取り組みが必要です。ロックダウン(都市封鎖)やその他の規制により、大きな苦痛や深刻な孤立にさらされかねない高齢者にとって、このことはきわめて重要です。

第3に、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)から社会的保護、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、年金に至るまで、あらゆる社会的、経済的、人道的対応において、高齢者のニーズに十分に配慮しなければなりません。高齢者の大半は女性ですが、高齢の女性は貧困の中で、医療にもアクセスできずに晩年を迎える可能性が男性よりも高くなっています。こうした人々のニーズを満たすことをねらいとする政策が必要です。

そして第4に、高齢者を見えない存在として扱うことも、無力な存在として扱うこともやめましょう。多くの高齢者は収入を得て生活するとともに、仕事や家庭生活、教育と学習、他者へのケアに全面的に参加しています。その声とリーダーシップは大切です。

私たちが今回のパンデミックをともに乗り越えるためには、世界的、国内的な連帯の大幅な強化と、高齢者を含む社会のあらゆる構成員による貢献が必要です。私たちが以前の水準を超える復興を目指す中で必要なのは、より包摂的かつ持続可能で高齢者に優しく、未来にふさわしい社会を構築するための野心とビジョンなのです。


■ アントニオ・グテーレス
ポルトガルの政治家。第9代国際連合事務総長。同国の首相や社会主義インターナショナル議長、国連難民高等弁務官(UNHCR)などを歴任。