遠藤潔の活動報告

第十八代 遠藤宗家 遠藤潔

ジェームス・ギャノン ピースウィンズ・アメリカ代表、ジェイコブ・スレシンジャー 米日財団(USJF)代表理事

2025年10月10日
ピースウィンズ・アメリカのジェームス・ギャノン代表とジェイコブ・スレシンジャー 米日財団(USJF)代表理事は、アメリカの対外援助(USAIDなど)の停止措置を踏まえた今後の日米協力関係に関する『米国の対外援助削減 日米協力に与える影響』報告書をまとめた。

報告書では、トランプ政権の対外援助政策の転換(USAIDの解体など)により世界の何百万もの人々の生命と生活が危険にさらされるだけではなく、これまでに構築された開発援助システムを不安定にする。さらに日米開発協力の将来に影響を及ぼすことが、実例とともに分析されてる。

概算では2025会計年度の米国対外援助事業の3分の2が終了となり、米国対外援助総額の約半分に相当する。新年度に向けてトランプ政権は、対外援助費の84%削減を提案している。USAID(米国国際開発庁)が解体され、国連への拠出金も減額された影響で、世界各地の難民キャンプの食料事情や生活環境は急速に悪化し、7月時点ですでに375.000人もの人々が死亡した可能性がある。2030年までには、更に1.400万人が死亡するとの予測もある。

アフガニスタンや南スーダンなどでは、難民キャンプまでの長く危険な移動を支えてきた国連人道航空サービスの維持が困難になることで、日本を含む各国と現地NGOの任務遂行が非常に困難になっている。その他、安全保障、情報収集、組織間調整など開発エコシステムが崩壊の危機に瀕している。紛争、貧困、環境破壊、感染症など脆弱な人々が直面する課題は「人間の安全保障」の概念が示す通り、全体的な支援が行われなければ人々の尊厳を守ることはできない。

開発、人道支援を戦略的に行うことは、米国は民主的統治や透明性の確保、ジェンダー平等を推進してきた。米国のリーダーシップ消失は、太平洋諸国やバングラデシュ、カンボジアなどにおいて、一帯一路政策を強力に推し進める中国の台頭を許している。

こうした傾向が続けば、デジタルインフラを始め中国が主導権を握ることになり、日本企業にってのビジネス環境は非常に厳しいものとなる。アメリカの対外援助政策が低減する中、日本のODA増額がリーダーシップを得られる好機としている。


■ ジェームズ・ギャノン
ピースウィンズ・アメリカ最高経営責任者、JCIE USAシニアフェロー。01年JCIE USA入社、21年迄20年間事務局長、日米関係を強化し、国際協力の深化を促進するための幅広いイニシアチブを立ち上げ、主導。それ以前は、国際協力銀行で研究を行い92年~94年日本交流教育(JET)プログラムの一環として、日本の中学校で英語を教えた。ノートルダム大学学士号取得後、愛媛大学大学院、コロンビア大学国際公共問題学部修士号取得。米国JETプログラム同窓会理事会副会長等を歴任。13年『成長する力:アジア地域安全保障における市民社会の役割』、15年『リーダーシップを探して:日本の政治的リーダーシップのジレンマ』共同編集者。日米関係、アジアの進化する地域秩序、国際問題におけるNGOの役割に関する多数の記事やレポートを執筆。

■ ジェイコブ・M・スレシンジャー
米日財団の代表理事。ハーバード大学経済学学士号取得。ウォール・ストリート・ジャーナル紙記者・編集者の経済・経済政策担当し、選挙やサミット、貿易戦争や市場の暴落、労働ストライキ、9・11テロ、東日本大震災・津波、福島原発メルトダウンの3つの被災などについて報道。ジャーナル紙の東京支局長、ワシントン副支局長、グローバル金融規制担当編集長を歴任。97年サイモン&シュスター社出版「Shadow Shoguns: The Rise and Fall of Japan’s Postwar Political Machine」著者。タンフォード大学アジア太平洋研究センターフェロー、シカゴ大学スティグラー・センター・ジャーナリスト。21年Distinguished Careers Instituteフェローとして米国と世界の、民主主義に対する脅威と課題を研究。03年ピューリッツァー賞ジャーナルチームメンバー、14年スタンフォード大学ショーレンスタイン・ジャーナリズム賞受賞。