前財務官の神田真人内閣官房参与は、トランプ米政権の関税政策について「どういう目的、タイミングで、どういう関税率でやるのか。何も決まっていないところがある」と述べ、動向を注視する考えを示した。

神田内閣官房参与は、トランプ政権が国内向けに減税をしながら輸入品の関税を上げ、さらに不法移民の国外退去を進めた場合「当然、インフレになる」と指摘した。

一方、トランプ米大統領は「バイデン前米大統領よりも、インフレを抑えるとも言っている」とも言及した。「諸外国の選挙では、インフレにより国民の生活が困難になったことが、与党の敗北につながっている。2年後の米中間選挙を控え、インフレを放置するわけがない」との見解を示した。

神田内閣官房参与は2月24日、1966年の設立以来、11代連続で日本人のアジア開発銀行（ADB）総裁に就任することを受け、既に多くの首脳や中央銀行総裁と意見交換していることを明らかにした。「米連邦準備制度理事会（FRB）は、過去に金利を上げたことにより、かなりの確率で金融危機になった。また、金利上昇を不安視する人たちは少なくない」とし、各国経済の支援を「ADB総裁として、しっかりと対応する」と述べた。

神田内閣官房参与は国際金融の実務経験を生かし、民間資金の活用を含めた域内に投資を呼び込むと訴え、69の加盟国・地域の全会一致で選出された。浅川雅嗣総裁の辞任に伴い、26年11月23日までの任期となる。

ADBは、アジア・太平洋地域の途上国のインフラ支援や地球温暖化対策などの課題に取り組んでおり、ADBの意思決定機関である総務会議長を務めるイタリア中央銀行のパネッタ総裁は「神田次期総裁の豊富な経験と国際場裏での実績あるリーダーシップは、ADBの大きな力となる」と表明している。


■　神田眞人
87年東京大学法学部卒業、大蔵省入省、理財局配属、89年オックスフォード大学留学（経済学修士取得）、93年仙台国税局十和田税務署長、為替市場課長補佐、大臣官房企画官（大臣官房秘書課担当）、06年世界銀行理事代理、09年財務省給与共済課長、主計官、13年国際局、15年金融庁出向、OECDコーポレートガバナンス委員会議長、20年国際局長、21年財務官、24年財務省退官、内閣官房参与（金融・国際経済担当）、神戸市顧問（グローバル都市経済戦略担当）。