ニュースリリース|2009年

ユベール・ヴェドリーヌ 元フランス外務大臣

2009.05.15
米国のサブプライムローン問題に端を発した米国の金融危機は世界的な広がりを見せ、昨年9月15日のリーマンブラザーズ破たんをきっかけに、1929年の大恐慌以来の世界の金融危機にまで発展した。

現在、世界の主要経済国の政府は、金融安定化のための協調的な行動をとっており、G7(7カ国財務相・中央銀行総裁会議)が「緊急かつ例外的な行動を必要としている」と位置づけ、金融システムと市場の安定への「あらゆる利用可能な手段を活用する」ことで合意した。

このような金融・経済における世界の激震は、フランスの地政学にも、大きな影響を与えている。ポイントは、今回の金融危機の震源地である米国の世界への信用と指導力が大きく低下したことだ。

これまでは圧倒的な軍事力の優位性を持ち、世界の地政学的な安定の基盤となっていきた米国も、中東や南西アジアでの混乱に加え、金融・経済面での弱さを露呈したことは、米国一極支配の終焉と世界が多極化に向かうという方向性を全世界に印象付けた。

ブッシュ政権から黒人初のオバマ大統領になったことで、いかにEU諸国のみならず、各国との協調関係を樹立できるかが、課題である。


●ユベール・ヴェドリーヌ
91年大統領府事務局長、ミッテラン大統領外交顧問、97年ジョスパン内閣外相、02年ドヴィルパン氏と交代するも、冷静で現実主義的な「左のゴーリスト」として知られ、「9・11」後のアメリカの対テロ戦争では「同盟すれど同調せず」の姿勢を貫き、アメリカでは「ヴェドリズム」の呼称さえ生まれた。07年サルコジ大統領要請によりグローバルゼーション下のフランス外交につき報告書を提出。

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