2013.03.27
クルシード・インド外相は、日印関係には2つの側面があるとした。1つは、日本がインドの独立運動家のチャンドラ・ボースを支援してくれたような歴史的なもの。もう1つは、日本の産業モデルのインドへの移転。マルチスズキのような企業が効率的な経営や技術力を学ぶ機会を与えてくれていること。
日本が官民一体となってアジア向けのインフラ輸出に力を入れている。インドとの間で浮上している新幹線システムの採用を念頭に置いた高速鉄道の輸出構想も、そのひとつ。だがクルシード氏の会見からは、日本の優れた技術力への期待とは裏腹に、「メード・イン・ジャパン」のコストの高さが輸出のネックになりかねない難しさがうかがえた。
新幹線方式を視野に入れた高速鉄道構想は2012年11月、野田佳彦前首相が訪問先のカンボジアでシン印首相と会談し、具体的な協議の推進で一致した。日本で磨いた技術やノウハウの対印輸出に成功すれば、他の新興国へのインフラ輸出にも弾みがつくから、売り込む側には力が入る。インドも老朽化が著しく、遅延が多発する都市間鉄道網を速やかに近代化したいところだ。
一見、日印両国の思惑は一致する。ところがクルシード氏は「日本からの重要かつ真剣な提案だが、我々にとっての優先課題はいかにコストをかけ過ぎずに鉄道の高速化を実現するかだ」と指摘し、必ずしも新幹線方式にはこだわっていないことを示唆した。
国策で運賃が航空路線よりも格段に低く抑えられている鉄道は、庶民に欠かせない長距離移動の手段。新幹線を導入した結果、コストがかさんで運賃が跳ね上がってしまったら、利用者の不評は避けられない。クルシード氏は「日印双方に斬新な発想が求められている」と付け加え、資金協力を含めたコストを抑える仕組みの導入を暗に促した。
クルシード氏の会見の1週間前、日経の紙面には「ベトナム、新幹線計画凍結」との見出しが躍った。巨額の建設費用に国民の反発が強まったためだという。コストの壁をどう乗り越えるか。クルシード氏の発言は大きな課題を突きつけている。
●サルマン・クルシード
91年連邦下院議員初当選、93年連邦外務担当閣外相、98年UP州コングレス党委員長 00年全インド・コングレス党委員会政策企画調整部会長、03年コングレス党執行委員会特別メンバー、04年コングレス党幹事、 04年UP州コングレス委員長、 09年連邦下院議員再選(2期目) 、09年連邦企業問題及びマイノリティ問題担当専管閣外相、011年連邦水資源及びマイノリティ問題相、 11連邦法務相(マイノリティ問題相兼任)、12年連邦外相就任。
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