2012.03.07
本年2月はチャールズ・ディケンズの生誕200周年を迎えた。
チャールズ・ディケンズは19世紀イギリス庶民の声を代表する作家でる。ディケンズの小説には、市井の人びとの笑いと、涙と、息づかいがふんだんに感じられる。
しかしそればかりではなくもっと別の「あるもの」が、たとえばディケンズが夢中になった自作の公開朗読などに垣間見られるようである。
ディケンズはおとなしく小説を書いているだけでは満足できず、声をふりしぼって朗読に打ち込んだ。
死に至るまでの17年間ほど、何物かにとり憑かれたように熱中した。イギリス内外のあちこちで、みずから用意した台本と、稽古と、入念な演出設計のもとに、2000人からの聴衆を集めて自作を読んだ。
その回数はざっと500回近くにのぼる。小説家チャールズ・ディケンズはまた、朗読者ディケンズでもあった。
●梅宮創造
早稲田大学教授。英文学。主な訳書にピーコック作『夢魔邸』、グロウスミス作『無名なるイギリス人の日記』、タートルトブ作『じじバカ』、ディケンズ作『英国紳士・サミュエル・ピクウィク氏の冒険』、『ディケンズ・公開朗読台本』など。イギリス文学を専門とするが、専門奴隷となることを潔しとせず、広く文学のもつ滋養分と毒素のなかに新しい表現様式の発見をめざす。
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